連載「うちのSkill」は、運営元が実際に使っているSkillを紹介する回です。今回はanti-ai-design、Webデザインが「AIが作った感」を出す原因を体系化し、着手前の宣言と出力前の監査で回避させるSkillです。

このSkillは机上の企画から生まれたものではありません。当サイトBroad Skills自体のデザインが「AIが作った感が強い」と指摘され、4回作り直しになった経緯から生まれました。同じ失敗を繰り返さないために、失敗の原因を言語化してSkillに落とし込んだのが始まりです。

作り直しになった原因は個々の装飾ではなかった

最初の作り直しの際、修正の指示は「紫のグラデーションをやめる」「絵文字を減らす」といった個別の指摘でした。ところが直しても直しても、別のページでまた同じ指摘を受けます。個々の装飾を潰すだけでは、根本の原因に届いていなかったからです。

4回の作り直しを経て見えてきたのは、原因が個々の装飾よりも判断の痕跡がないことにある、という理解です。AIは学習データの統計平均を出すため、放置すると最頻値の見た目、完全な均一性、固有の事情ゼロという3点が揃います。この3点が揃った状態こそが「AIが作った感」の正体でした。anti-ai-designは、この3点を逆手に取り、着手前の宣言と出力前の監査で平均値からの脱出を強制する設計になっています。

外部調査でAIくささの正体を体系化した

3点の理解に至るまでには、Web上の事例を集めた外部調査があります。紫から青にかけてのグラデーション、英大文字の小さなラベルの反復、中央揃えヒーローと同型3枚カードの教科書配置、一次情報の欠如といった具体的な特徴を洗い出し、根拠資料としてまとめました。この調査があったことで、禁止リストは印象論ではなく、繰り返し観測された型に基づくものになっています。

3段構えの強制。宣言、禁止リスト、監査

Skillの運用は3段階です。制作に入る前に、参照する現実の様式を1つ選び、基調色やアクセント色や角丸の方針を1〜2行で宣言します。宣言できないなら設計がまだ固まっていないと見なします。次に禁止リストで、最頻値の見た目にあたる装飾を明示的に避けます。最後に出力前セルフ監査で、禁止リストと積極ルールの両方を1つずつ確認してから納品します。SKILL.mdの禁止リストは次のように定めています。

- 紫〜青(indigo系)のグラデーション。グラデーション自体を原則使わない
- 小さな英大文字ラベル(eyebrow/TRENDING等)を複数セクションに反復
- 「革新的」「最先端」「〜を解き放つ」等の中身のない定型句
- ダミー人名(John Doe類)、丸すぎる数字(99.9%、50%)

禁止リストと対になっているのが積極ルールです。不均一を1箇所以上意図的に作る、実測値や実物のコードといった一次情報を見た目に出す、編集後記のような人の声を最低1箇所置く、という指示です。避けることと、代わりに何を足すかをセットで示している点が、このSkillの実効性を支えています。

形容詞の指示より禁止リストが効く理由

「もっと個性的に」「モダンでクリーンに」といった形容詞の指示は、AIにとって統計平均への回帰を止める力を持ちません。学習データ全体の平均的な「モダンでクリーン」を出すことが、そもそも形容詞の指示に対する最も自然な応答だからです。禁止リストは逆に、平均的な出力に含まれがちな要素を名指しで塞ぐため、AIは平均から外れた選択を取らざるを得なくなります。「やらないこと」を明文化する方が、「もっと良くして」より出力を確実に変えるという発見が、このSkillの核にあります。

自分の組織で真似るには

  • 作り直しの原因を個々の指摘で終わらせない。指摘のたびに直すだけでは同じ失敗が繰り返されます。複数回の失敗をまたいで共通する原因を1段抽象化して言語化することが、Skill化の出発点になります。
  • 禁止リストは形容詞より具体名で書く。色、配置、定型句、数値の丸め方など、名指しできる要素まで踏み込んで禁止すると、AIの出力が実際に変わります。
  • 禁止と同時に積極ルールを添える。避けるべきことだけを並べると無難な方向に寄るため、不均一や一次情報や人の声のように、代わりに足すべき要素もセットで指示します。